フィルムの時代はいつ終わったのか
フィルム写真の終焉直前に業界の現場ではデジタルカメラなど眼中になかったという記事が気になったので、自分なりにフィルムとデジタルの移行についてダラダラと書いてみました。
初めての民生向けデジタルカメラ
1994年の11月にカシオが世界初となる民生向けのデジタルカメラ、QV-10を発売しました。
パソコンとはRS-232Cを使用して接続していた事を考えると、いかに昔かわかるかと思います。
ちなみに、その2ヶ月後には初めて動画記録が出来るデジカメ、DC-1をリコーが発売しています。
ゲームボーイ用のカメラ、ポケットカメラは1998年に発売、いわゆる写メ、カメラ付き携帯電話は2000年にシャープから発売されています。
私がはじめて買ったデジカメはオリンパスのCAMEDIA C-21というやつで、1999年に発売された200万画素のものでした。
200万画素のデジカメが出始めた頃で、200万画素としては破格の値段だったような印象がありますが、それでもメーカー希望小売価格が89000円。
実際に購入した価格も6万円以上だったような記憶があります。
ニコンのデジタル一眼レフ
ニコンはE2というデジタル一眼レフを1995年に富士フィルムとの協業により発売しています。
この時のはお値段は110万円。Eシリーズは合計6種類発売されています。
新宿あたりの中古屋でたまに見かけることがありますが、売れるのでしょうか。
Eシリーズの後、ニコンからはD1シリーズなどが発売されますがプロ向けの高価なものでした。
アマチュアに普及するきっかけを作ったと言われるデジタル一眼レフはニコンだとD100とD70です。
D100は2002年に、D70は2004年に発売されました。
特にD70はメーカー希望小売価格が15万円、実売12万円台とD100よりも安くなったことから大ヒットしました。
ニコン初のデジタル一眼レフから7年という時間を長いと捉えるか、短いと捉えるかでフィルムからデジタルへの移行に対する考え方は大きく変わりそうです。
各社のデジタル一眼レフ
CONTAXがCONTAX N DIGITALを2002年2月に発売。
ニコンがD100を2002年6月に発売。
キヤノンがEOS 10Dを2003年3月に発売。
ペンタックスがist Dを2003年9月に発売。
オリンパスがE-1を2003年10月に発売。
ニコンがD70を2004年3月に発売。
キヤノンが20Dを2004年9月に発売。
コニカミノルタがα-7 Digitalを2004年11月に発売。
というわけで、各社のデジタル一眼レフは2002年から2004年の間に出揃った。
オリンピックとカメラ
デジタル一眼レフがオリンピックで使われるようになったのが、1998年の長野オリンピックと言われています。
ニコンやキヤノンはオリンピックに合わせ新製品を開発すると言われていますが、長野オリンピックではデジタルカメラでした。
この時はまだ発売前の、ニコンで言えば翌年発売されるD1の試作品を持込み、デジタル一眼レフで撮影した写真でも新聞の一面に使えるという確信を得たとか。
ただし、長野オリンピック当時はまだまだフィルムカメラ全盛の時代で、デジタル一眼レフは実用というよりもテスト的な意味合いでしかありませんでした。
その後、2004年のアテネオリンピックではほぼ完全にデジタルカメラに移行していたと思いますが、2000年のシドニーオリンピック、2002年の日韓ワールドカップの時はまだフィルムカメラも使われていたんんじゃないかと思います。
トイカメラブーム
デジタルカメラが盛り上がってきた頃、フィルムカメラもある種の盛り上がりがありました。
トイカメラブームです。
ロモのLC-A、ホルガ、ダイアナ、フジペットなどがトイカメラとしてもてはやされました。
ロモのLC-A以外は実際におもちゃ的な子供用のカメラでしたが、ソ連(ロシア)製のLC-Aは出来の悪さが写りの面白さと捉えられ、受け入れられました。
90年台からトイカメラブームははじまり、2002年に通称ポルガ(ホルガにポラロイドバックを付けたもの)が発売され、この頃がトイカメラブームのピークではなかったかと思います。
その後、2007年にはロモグラフィーからダイアナプラスが復刻されましたが、この頃はピークを過ぎていたかと思います。
トイカメラブームはデジカメにも飛び火し、トイカメラ風に写るデジカメというのも作られました。
有名なものにタカラトミーのXiaostyleというのがあります。
生産終了直前に人気になったこともあり、ヤフオクではプレミア価格で落札されるくらいでした。
そのXiaostyleは2006年のことです。
トイカメラブームは写ルンですやHIROMIXからの繋がり、インスタントフィルムのチェキや自分撮りなどとの関連が大きいと思われることから、改めて時系列を見直したいところです。
NATURA BLACK F1.9
私が最後に買った中古ではない新品のフィルムカメラはNATURA BLACK F1.9です。
2005年の3月に発売されて、夜桜を撮ってみたくてすぐに買いました。
この頃すでにデジタルに押されていて、当時デジタルでは弱かった高感度と広角をアピールした製品です。
生産終了後にヤフオクで値が上がり、買った時の倍くらいの相場になったこともありますが、かろうじて手元に残っています。
夜桜を撮ったあとは、もっぱら飲み会で使っていましたが、酔った手元で何度と無く落としましたが案外丈夫で壊れませんでした。
ただ、デジタルに押されていたとは言え、デジカメでパシャパシャ撮る人はまだ少なかった記憶があります。
すでに携帯にカメラが付いていた頃ですが、携帯でもパシャパシャ撮る人もいなかったような。
この頃使っていたデジカメはパナソニックのDMC-LC33という320万画素のやつだったと思います。
このLC33というのも妙に人気があるデジカメで、買った時よりもヤフオクで高く売れました。
キタムラに行ってもフィルムを持ち込む人が沢山みられた記憶があります。
修学旅行とカメラ
日本の場合、最初にカメラに接する機会というのはここ20年くらいは修学旅行が大多数だと思います。
修学旅行でフィルムカメラを持っていった、写ルンですを持っていった、デジタルカメラを持っていった、デジタルカメラですらなく携帯で撮ったという具合に変遷しました。
生徒がフィルムカメラを持ちはじめてからは時間がかかり、生徒が一人ひとりカメラを持っていく以前は修学旅行に同行したカメラマンが写した写真だけが修学旅行の写真でした。
写ルンですからデジタルカメラ、写メへの変遷がいつ起きたのか、重要な転換点だと思うのですが、これがよくわかりません。
アグファの破産
2005年、アグファのULTRAの生産が終了。
蜷川実花が愛用していることでも知られる、派手な色のカラーネガフィルム。
ロモブームなどあり人気のフィルムでしたが、アグファの破産により生産も終了。
同時プリント500円
撮影したフィルムは現像、プリントという工程を経て紙になった写真を手に取ることができます。
現像とプリントの値段を合わせて請求するのが同時プリントです。
同時プリントが最も安いのはいつなのかわかりませんが、私自身が最も利用したのはローソンの500円の同時プリントです。
2006年3月までが500円で、4月からは600円に値上げしたようです。
つまり、2006年4月の頃、同時プリントのニーズは値上げするくらい落ちていたと考えられます。
キタムラで現像とプリントを行うと2000円以上したかと思うので、600円でも十分安いのですが。
ちなみに現像だけならショップ99で99円でできたようですが、私は利用したことがありません。
100円フィルム、センチュリア
安いフィルムというこコニカミノルタのセンチュリア200、コダックのゴールド、アグファがありました。
キタムラやヨドバシ、ビックなどで1つ100円だったり、20本パックが1980円とかだったかと思います。
コダックのゴールドは100円ショップでも販売されているくらいでした。
センチュリアはコニカミノルタ(元々フィルムを生産していたのはサクラカラーで有名なコニカの方)でしたが、コニカミノルタが2006年にカメラ・写真関連事業を一切売却し、フィルムやペーパー、証明写真などがDNPに移りました。
その後、DNPがセンチュリアを販売していましたが、いつの間にか見なくなりました。
いつ頃だったかと思い検索してみるとこんなツイートが。
ビックと本屋見て帰宅。DNPのセンチュリア200がほとんど無くなっていた。カラー35mmフィルムは、ある意味一番難易度が高いかも。プリントすると、中判ネガカラーが楽すぎる。
— Yuya F (@yuya76) 2009, 7月 25
2008年から2009年ごろに生産が終了し、その後は在庫が販売されていたようです。
この頃まで一番安いフィルムは100円程度で販売されていたようです。
ポラロイドの生産終了
2008年、ポラロイド社がインスタントフィルムの生産を終了しました。
インスタントフィルムと言えばポラロイドというくらいメジャーな存在でしたが、インスタントフィルムの特徴である撮ってすぐに写真になる(プリントになる)という特徴をデジタルカメラに追いやられ、ジリ貧のポラロイドはついに2008年にインスタントフィルムの製造をやめました。
ポラロイド社は2001年に経営破綻していますので、それから2008年まではよく耐えたというほかありません。
インスタントフィルムは富士フィルムが現在も販売していて、チェキは現在でもアジア市場で人気があります。
コダクロームが終了
2009年、コダックのコダクロームの生産が終了。現像受付は2010年まで。
コダクロームは74年の歴史を持つカラーポジフィルムの一種で、唯一の外式ポジフィルム。
「僕のコダクローム」と歌われるなど、愛されたフィルム。
経年劣化に強いので、30年くらい前に父親が私を撮ったコダクロームもいまだに色がくっきりと残っています(同時代のフジの内式ポジフィルムは色が抜けてしまっています)。
コダックの破綻
コダックが2012年1月に経営破綻。
コダックやフジはプロ用のフィルムをしっかりと供給しなくてはいけないという課題もあり、特にコダックはこれが足枷となり、その後苦戦したのかもしれません。
さらに、コダックは工場を有し数万人の従業員を抱えていたため、事業転換・配置転換が上手く行え
なかった事がその後の急速な失速に繋がりました。
これはフィルムの一つの終焉とも言えるでしょう。
年表まとめ
1994年 カシオQV-10が発売
1998年 長野オリンピックでデジタル一眼レフが使われる
2000年~02年頃 トイカメラブームが最盛期に
2001年 ポラロイド社が経営破綻
2002年~2004年 コンシューマ向けデジタル一眼レフが各社から発売される
2005年 アグファが経営破綻
2006年 コニカミノルタが写真関連事業を売却
2008年 ポラロイド生産終了
2009年 センチュリア(100円フィルム)販売終了
2009年 コダクローム販売終了
最後に
2004年のオリンピックでは報道カメラのほとんどがデジタル化していたと思われます。
一方で広告写真などスタジオで撮られる写真はまだまだフィルムが主流でした。
また、フィルムの需要としては映画も外せないのですが、映画についてはフォローできていませんが、ちょっと検索した限りでは2004年の時点では撮影も上映もほぼフィルムのようです。
2005年にアグファが経営破綻し、2006年にコニカミノルタが写真関連事業を売却した事を考えると、この頃を境としてデジタル化が加速していたと考えられます。
コニカミノルタは2004年に初めてのデジタル一眼レフを発売していますが、この頃までにデジタル化に対応したかどうかが分かれ目だったのかもしれません。
(現在デジタルカメラを販売しているペンタックス、オリンパスは2003年までにデジタル一眼レフを発売しています)
デジタル化によりアグファ、コニカミノルタ、ポラロイド、コダックが脱落しましたが、いずれもフィルムを手がけていたメーカーだという事を考えると、デジタル化への対応が遅れたのではなく、工場や人員を必要とするフィルム供給に足をすくわれたのかもしれません。
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